le fleuve 上垣 河大×Chocolat

こんにちわ。こちらは『チョコレートをエンターテイメントにする』をテーマに、×Chocolatのakiが綴るブログです。チョコレートの面白さについて、様々な角度から発信しています。

さて、今回は人×Chocolatについて書いてみようと思います。このシリーズでは、ブランドや商品よりも、その人となりに重きを置いて書いていくつもりです。記念すべき初投稿は、兵庫県養父市に工房を構える「le fleuve」上垣 河大シェフについて。

さて、どんな物語が待っているのでしょうか。

出会い

今年のバレンタインでした。上垣シェフと出会ったのは。

イベント会場内をプラプラと散策していて、ふと気になるブランドを見つけました。それが「le fleuve」でした。

偶然、シェフ自ら店頭に立って試食をされていたので、頂いてみました。それがここ最近記憶にないくらいに美味しくて。衝撃の一言。

頂いたのは、「ハチミツシトロン」というボンボンショコラ。ハチミツってキャラクターが非常に出しにくい素材なんですが、それがちゃんと感じられること、そしてレモンとバジルが絶妙なバランスとタイミングで顔を出す。

最近、海外からのブランドが多くなってきている感がある日本のバレンタインですが、日本人が日本人のために作る最高に繊細なボンボンショコラだと感じました。まだこんな素敵なブランドがあったんだなと。素直にそう思いました。

聞けば福知山の名店、洋菓子マウンテンで修行されていたとのこと。その素材の合わせ方は、きっと師匠である水野シェフから学んだんだろうなと、納得したことを覚えています。

どんな素材をどんな風に使って作っているのかすごく気になって、シェフにお願いし快諾いただき、1ヶ月後工房にお邪魔することに。

初訪問

兵庫県養父市。大阪からは電車とバスを乗り継いで4時間ほど。自然豊かな町の中に、le fleuveの工房はあります。

シェフのご実家は農業・養鶏・養蜂をされており、その一角を改装し工房にしています。小さい頃から素材の本当の美味しさに触れていたとのことで、ここに美味しさを形作る大事な要素がありました。

そして初めて頂いた時に感銘を受けたハチミツシトロンはやはり、ご実家のハチミツを使っているとのこと。自分たちが手間暇をかけて作ったものだから、それにかける愛情もひとしおなんだと思います。

シェフ曰く、良い素材は余計なことをしなくても十分美味しいと。その素材が持つ良さを、如何にバランス良く組み合わせるか、他の余分な要素を削ぎ落として組み立てる、引き算の美学だと言います。

ここにも、美味しさに繋がる哲学がありました。

新しいショコラティエの形

le fleuveには店舗がありません。その販売の全てを通販と催事で賄っている、無店舗型経営です。サロン・デュ・ショコラ出店ブランドの中ではこれはかなり異色かなと思います。

そしてその製造の全てをシェフ一人でこなし、奥さんと二人三脚で経営を切り盛りしています。

豊かな自然の中で、窓の外の緑を見ながらお菓子を作り、8ヶ月になる娘さんをあやしながら注文をこなす。畑のブルーベリーを収穫し、仕事が終われば夕飯を作り、夜にはフランス語を勉強する。店舗が無いからこそ得られる自由が、そこにはあります。

ただ、そこに至る道のりは決して平坦なものではなかったとシェフは言います。独立した当初は知名度なんてあるわけもなく、地方イベントの屋台で売り歩く日々。それでも少しづつ認められていき、独立から2年後、ついにサロン・ドゥ・ショコラ京都に初出店となります。

僕が知る限りでは、こんなショコラティエいません。なぜこのような形を取るようになったのでしょうか。それにはシェフのある考えがあります。

常識を疑う

菓子業界には、独立して商売をする以上は店を持つという常識があります。そして店を持つ以上は、お客さんが来るような街中に店を構え、大きな設備投資と宣伝をし、人を雇ってたくさん作って売るというのが当たり前になっています。

そしてそれは業界の外にいる人たちにも、至極当然なことに映るんだと思います。僕自身も周りに独立を伝えた時、「店はどこ?」「いつオープン?」と何度も聞かれました。やはり独立するというのはそういう事なんでしょうね。

ただ、上垣シェフはそうしなかった。そのシステムに違和感を覚え、真逆の方向へ舵を切った。都心から遠く離れた場所で、一人で、最低限の設備で、店を持たずに売り歩く。その代わり、素材は最高のものを使う。

一番大事なところに集中する。冷静に考えてみれば当たり前のことなんだけど、実行できるかどうかは別問題。ある意味、モノが溢れた現代へのアンチテーゼなのかなと思います。

遊ぶように作る

そんな上垣シェフですが、普段からとても楽しそうに仕事をしています。まるで子供が楽しい遊びを見つけたように、好奇心いっぱいに作る。もっと美味しくするために、それまでのルールに捕らわれない自由な発想で素材と向き合う。

本人曰く、子供の頃は学校に行けない時期があったようで。思うに、窮屈だったんじゃないかなって。どうしても教育は、皆と同じであること、ルールを守ることを強制するから。当時のことは分からないけれど、今のシェフを見ていると、幸せそうだなって思います。

そしてそういう苦しい時期があったからこそ、素材や人に対しても優しくなれるんじゃないでしょうか。

おわりに

いかがだったでしょうか。人×Chocolatはこんな感じで、人にフォーカスを当てたストーリーを綴っていきます。そしてショコラティエだけでは無くて、ショコラに携わる色んな人々の想いを紡いでいけたらと思います。

今回、le fleuveの商品の事はハチミツシトロンしか触れていませんが、それ以外の商品ももちろん絶品です。オンラインショップも開設されていますので、繊細な上垣シェフの世界観に触れてみたくなった方はこちらからどうぞ

最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいチョコレート日和を。
Bon Chocolat!

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ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれの大阪在住。 社会人として12年の間、洋菓子業界を様々な視点から経験。現在はフリーランスのショコラティエとしてメディア運営や企業コンサルタントを中心に活動中。