こんにちわ。こちらは『チョコレートをエンターテイメントにする』をテーマに、×Chocolatのakiが綴るブログです。チョコレートの面白さについて、様々な角度から発信しています。
さて、今回はカカオバターについてのお話です。
意外と知らない人が多いんですが、カカオバターとバターは全く別物です。カカオバターが植物性脂肪であるのに対して、バターは牛乳などの動物性脂肪からできています。
成分や特徴も違うこの2つ。さて、どんな違いがあるのでしょうか。
では早速、進めていきましょう!
そもそも油って何だ?
自分たちの身の回りにも油ってたくさんありますよね。サラダ油、ごま油、オリーブオイル、バター、ラードなど、パッと考えただけでも色々あります。
この油、人間が生きていく上で欠かせない三大栄養素、炭水化物、タンパク質、油(脂質)の内の一つでもあります。この三つの中で油は1gあたり9kcalと最もカロリーが高く、摂りすぎに注意している方も多いかもしれませんが、体を構成する要素としても重要な役割を担っています。
例えば人間の脳の60%は脂肪でできていると言われていますし、他にも細胞膜、ホルモン、胆汁を作る材料になったり、皮膚に潤いを与える役割も担っています。
そんな重要な油ですが、主な成分は脂肪酸でできています。色々な種類の油がありますが、そのどれもが脂肪酸からできています。
その通り。トランス脂肪酸の説明は本筋から外れてしまうのでここでは割愛しますが、脂肪酸は炭素、水素、酸素の3種類の元素から構成される物質で、構造によって分類も働きも変わってきます。
そんな脂肪酸、分類方法によって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに大きく分けられます。
飽和脂肪酸
- 主に肉や乳製品に多く含まれる酸化しにくい油
- 溶ける温度が高く常温では固体が多い
- 結合する炭素の長さによって短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸と分類される
食品 | 特徴 | 例 | |
短鎖 脂肪酸 | 酢、バター等 | 主に体内で生成 脂肪の合成、ミネラルの吸収 | 酢酸、乳酸 |
中鎖 脂肪酸 | ココナッツオイル等 | エネルギーになりやすい 体に蓄積しにくい | カプリル酸 ラウリン酸 |
長鎖 脂肪酸 | ラード、牛脂等 | 吸収が遅い 余分は体脂肪として蓄積 | パルミチン酸 ステアリン酸 |
不飽和脂肪酸
- 主に植物に多く含まれる酸化しやすい油
- 溶ける温度が低く常温では液体が多い
- 構造によってオメガ3系、オメガ6系、オメガ9系に分類される
食品 | 特徴 | 例 | |
オメガ3系 | エゴマ油、青魚 | 体内で合成できない 中性脂肪を減らす | α−リノレン酸 EPA DHA |
オメガ6系 | コーン油 ごま油 ベニバナ油 | 体内で合成できない コレステロール値を下げる 摂りすぎに要注意 | リノール酸 |
オメガ9系 | オリーブオイル アボカドオイル | 体内で合成できる 悪玉コレステロールを下げる 高血圧や腸の働きに効果あり | オレイン酸 |
カカオバターの成分
さて、話をカカオバターに戻しましょう。カカオバターって実はほとんどが飽和脂肪酸のパルミチン酸、ステアリン酸、不飽和脂肪酸のオレイン酸でできているんです。そしてこの3つ、大きさもほぼ同じという特徴があります。
それに対してバターやラードといった油脂は、大きさも種類もバラバラな脂肪酸が集まってできているという特徴があります。
表にまとめるとこんな感じです。
カカオバターの特徴
それだけじゃなくて、カカオバターはその脂肪酸の並び方にも特徴があるんです。
以前こちらの記事で、カカオバターの分子の形について説明をしましたね。
あのアルファベットの「Y」が少し崩れたような分子の形、さらに細かく説明するとこのような構造になってます。
融点の高いパルミチン酸とステアリン酸の反対側に、融点の低いオレイン酸がくっ付いているという形になってます。これが結晶の状態でどうなるかを示すと、こうなります。
そう。溶けやすいオレイン酸が溶けにくいパルミチン酸とステアリン酸にサンドされて、ミルフィーユみたいになってますね。
この構造のおかげで、カカオバターは加熱するとまず中央のオレイン酸が溶け始め、さらに加熱すると全体が一気に溶けてしまうという特徴を持っているんです。
ミルフィーユもしばらく食べずに置いておくと少しずつ崩れてきますよね?カカオバターの場合はあれが急激に崩れる、そんな感じでイメージしてもらえると分かりやすいかなと思います。
実際に、他の油脂と比べてどれくらい急激に溶けるのかというのを示した「SFC曲線」というグラフがあるので、見てみましょう。
SFCとは「Solid Fat Content」の略で、ある温度における油脂全体に対する固体脂の比率を示すものです。
このグラフを見れば分かるように、カカオバターは25℃までは油脂中の80%以上が固体ですが、25℃を超えると急激に溶け始め、35℃では完全に溶けて液体になっていますね。
そのため、チョコレートは室温ではカチカチに固まっていても、口の中に入れるとサッと溶けてしまうんですね。これがチョコレートの口どけの正体です。
この急激に溶けるという現象、逆も当てはまるんです。つまり、急激に固まるんですね。
一般的に油脂は固体指数が15〜25%の時に形を粘土のように変えられる「可塑性」を持ちます。グラフをみてもらえれば分かるように、カカオバターはこの範囲が非常に狭い!
なのでショコラティエがチョコレートで飾りなんかを作るときは、一瞬の勝負になるわけですね。やれやれ。
カカオバターの使われ方
そんな特徴を持ったカカオバターですが、使われ方は様々です。
チョコレートを作る時であれば流動性を高めるため追油として使われたり、ホワイトチョコなんかは主に「カカオバター+粉乳+砂糖」でできています。
なのでカカオバターを取り出す技術が無かったら、ホワイトチョコは存在していないということになりますね。バンホーテンさんに感謝。
それ以外にも人の体温直下で溶けるという性質を利用して、ハンドクリームや座薬、化粧品の基剤として使われていたりもします。
まとめ
・溶けにくい飽和脂肪酸と溶けやすい不飽和脂肪酸でできていて、固体⇄液体への変化が急激
・身近な化粧品や薬などにも使われている
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいチョコレート日和を。
Bon Chocolat!