甘いけど甘くない、チョコレートを取り巻く取引の現実

こんにちわ。こちらは『チョコレートをエンターテイメントにする』をテーマに、×Chocolatのakiが綴るブログです。チョコレートの面白さについて、様々な角度から発信しています。

さて、今回はお金×Chocolatの初投稿となります。第1回目はチョコレートの原料となるカカオ豆の取引に関するお話です。

ノワール
何だか難しい話になりそう、、、

普段何気なく食べているチョコレートの原料、カカオ豆がどのようにして取引されているのか、知らない人も多いと思います。そしてその問題点も。

確かに難しい部分もありますが、出来るだけ分かりやすくまとめますので付いてきて下さいね!

それでは早速、進めていきましょう!

カカオ豆の基本的な取引の方法

カカオ豆は基本的に、このような流れで取引されています。

まずは農家がカカオ豆を栽培し、発酵、乾燥させる。この辺りのプロセスは以前詳しく書いてますので、参考にしてください。

どうやってカカオ豆からチョコレートになるの?その過程を一挙公開!

2020年7月8日

そこからチョコメーカーでチョコレートに加工されるまでに、多くの人が関わっているんですね。

まずは仲買人。仲買人と一口に言っても様々で、農園から直接買い付けて回る小規模なものから、さらにそれを買い付ける大規模なものまであります。

そうして集められたカカオ豆は一旦倉庫に保管されます。保管といえども、管理が必要ですからここも人が関わってますね。

そしてそれを輸出する商社。この商社がカカオ豆を大量に買い付けてチョコメーカーへと売る。こうしてやっとチョコレートを生産することが出来るんですね。

これがカカオ豆が取引されるときの基本的な流れになります。実に多くの人が関わっていることが分かりますね。

そして多くの人が関わるということは、それだけ中間マージンが増えるということですね。つまりコストがかかるわけです。

問題点

基本的にはこのような流れでカカオ豆は取引されているんですが、いくつか問題点が指摘されています。それが

  • カカオ農家の経済的困窮
  • 児童労働
  • 森林破壊

です。順番に説明しますね。

カカオ農家の経済的困窮

スペイン人のコルテスによるアステカ侵略以来、チョコレートを生産するのが貧しい途上国で、消費するのが豊かな先進国、という格差の構図は現在まで変わっていません。

アフリカでカカオ豆を生産するのは、何百万人という零細な自作農です。「フェアトレード」の2018年の調査によれば、コートジボワールの農家の6割は、一人当たり日収が1ドル以下という最貧困層に属しています。

彼らにとって、3ドルもするチョコレートは、簡単には手が届かない贅沢品なんですね。

ノワール
じゃあ、カカオ豆の値段上げればいいんじゃないの?

そう簡単にはいかないんですね。実はカカオ豆の国際取引価格というのはニューヨークとロンドンの先物取引市場で決まるんです。

モノの価格と言うのは、需要と供給のバランスで決まっていると言うのは聞いたことあるでしょうか。需要が多いのに供給が少なければ価格は上がるし、逆に需要が少ないのに供給がダブついていれば価格は下がりますね。

カカオ豆も同じで、豊作であれば価格が下がるし、不作であれば価格が上がるのが基本的な原理です。

ただ厄介なことに、先物取引という性質が問題をさらに複雑にしてしまいます。

先物取引を詳しく説明するとややこしくなるので、とかFXをイメージしてもらえればいいかなと思います。

株やFXって、会社の業績や日本円の価値とは関係なく価格が乱高下することがあるんですね。これって、投資マネーの存在が関係してます。

要するに、儲けるという目的のために、会社の成長度合いや日本円の状況に関わらず大量の資金を投入したり、逆に売り叩いたりする。

それによって、実態とはかけ離れた価格になることがあるんですね。

カカオも同じ現象があって、カカオは要らないけど儲けたいという投資家の存在で、実態とは違う価格設定になることがあります。

つまり、カカオ農家には価格を決定する権利は無い上に、価格も実態を反映していないという状況になっています。

これが、カカオ農家が困窮する大きな原因になっています。

児童労働

そして次に引き起こされるのが児童労働。困窮したカカオ農家はより安い労働力を求めるようになります。つまり、子供を農園で働かせるんですね。

そして驚くことに、その中には人身売買で連れてこられた子供も存在するということ。世界的な取り組みによってそのような事態は少なくはなっているようですが、それでも西アフリカでは200万人以上の子供達がカカオ豆農園で過酷な児童労働に駆り出されています。

そしてそこから、教育格差でますます悪循環に飲み込まれてしまうという現実があります。

森林破壊

困窮したカカオ農家は別の生計を立てようとします。それが森林伐採です。環境破壊の問題は深刻で、コートジボワールではかつて国土の4分の1を占めた熱帯雨林が、伐採によって4%にまで激減してしまっています。

新しい取引の動き

こうした問題を解消するため、新しい動きも出てきています。

最大の生産国であるコートジボワールとガーナが連携し、生産調整によって価格交渉力をつけようと、企業連合を形成しました。

石油業界にはOPEC(国際石油輸出機構)がありますが、そのチョコ版ということでCOPEC、あるいはチョコペックなどと言われています。

農産物で先物取引市場から生産国へ価格の主導権を取り戻そうとする点で、これは画期的な出来事です。目的はもちろん、カカオ農家の保護

両国は2019年6月、農家に対するトンあたり2600ドルの最低買取価格を世界のチョコレート企業に要求しました。この要求は企業の強い抵抗で頓挫したものの、トンあたり400ドルの上乗せを勝ち取ることができました。

我々消費者からするとチョコレートの値上げは避けたいところですが、これで少しでもカカオ農家の困窮が解消されるといいですね。

まとめ

カカオ豆の取引
・価格は農家が決められない

・カカオ農家の経済的困窮による問題が指摘されている

・ガーナとコートジボワールで取引の新しい動きがある

最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいチョコレート日和を。
Bon Chocolat!

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ABOUTこの記事をかいた人

1984年生まれの大阪在住。 社会人として12年の間、洋菓子業界を様々な視点から経験。現在はフリーランスのショコラティエとしてメディア運営や企業コンサルタントを中心に活動中。